「国際結婚にあたって苗字をどうするか?」国際恋愛をしている多くのカップルが入籍をするにあたって、必ずぶつかるのが“苗字の壁”です。
夫婦同姓にしたいパートナーと、別姓にしたいわたし。ふたりの間で何度も議論を重ね、最終的に「夫婦同姓」を選んだわたしたちでしたが、その改姓の決意はパートナーの母国語であるロシア語の「あるルール」によって、あっけなく崩れることになったのです。
この記事では、わたしたち夫婦がロシア語の「性別による格変化」という衝撃の理由で改姓を断念し、夫婦別姓を選んだ驚きの経緯をご紹介します。「国際結婚の苗字」で悩んでいる方や、特にロシア語圏との結婚を考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。わたしたちの実体験が、みなさんの選択のヒントになれば幸いです。
改姓を決意した理由
パートナーからのプロポーズを受けた1年後。わたしたちは入籍に向けて手続きの準備を始めていました。
そこでぶつかった「苗字の壁」。夫婦別姓に大賛成だったわたしとはうらはらに、パートナーは「夫婦同姓にして、自分(夫)の苗字を名乗ってほしい」の一点張り。実は彼の一族がとても珍しい苗字で、“その苗字を後世に残したい”というのが大きな理由だったのです。
ロシア正教を信仰しているパートナーは、家族や親族とのつながりを大切にしていて、血のつながりを重要視しています。そのため、自分の子どもにも必ず自分の苗字をつけたいと以前から主張していました。
一方のわたしは、苗字が変わることによる身分証明書の変更手続きの煩雑さや、これまでの仕事のキャリアのことを考えると、「せっかく夫婦別姓の選択肢があるのに…」という気持ちでした。
話し合いを重ねた結果、わたしたちは「夫婦同姓」を選択しました。その代わり、手続きの大変さを理解してもらうために、わたしの身分証明書の変更手続きには必ずパートナーが付き添うことを条件にしました。
改姓する側だけが苦労するのが許せなかった故の結果です…笑
国際結婚の苗字の基本ルールと、一般的な手続き

そもそも苗字変更をするにはどうしたらいいの?と思っている方も多いと思うので、日本人と外国人が日本で「夫婦同姓」にする場合のルールを確認しておきましょう。入籍そのものの手続きについてはまた別の記事で触れますので、ここでは「苗字変更」に絞ってご紹介します。
まず、日本での国際結婚は「夫婦別姓が原則」です。そのため、夫婦同姓にするためには婚姻届提出から6ヶ月以内に手続きが必要になります。
日本人が外国人パートナーの姓に変更する場合
日本人が外国人パートナーの姓に変更する場合は、比較的手続きが簡単です。婚姻届の提出から6ヶ月以内に市区町村の役場で「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出するだけです。
6ヶ月を過ぎた場合も変更は可能なのですが、この場合は家庭裁判所での手続きが必要なので、忘れないように気を付けましょう!
外国人パートナーが日本人の姓に変更する場合
夫婦同姓で「日本人の姓」に揃える場合、外国人パートナーの苗字変更は3つ方法があります。
一番簡単なのはパートナーの本名自体は変更せず、日本で生活する上での「通称名」を役所に登録する方法です。この通称は、住民票やマイナンバーカードなどに記載されるようになり、公的な手続きでも使用することができます。
本国での氏名変更や帰化は通称名登録に比べて時間もお金もかかるため、手っ取り早いのは圧倒的に「通称名登録」かなと思いました。
なお、いずれの場合も必要な書類等は役所によって異なりますので、必ずお住まいの役所で詳細を確認してください。
「格変化の壁」に直面!改姓を断念した衝撃の理由

さて、夫婦同姓を決意したわたしたちは、必要な書類を確認するために役所を訪ねました。窓口の方に「夫の苗字に変更します」と伝えたところ、「少しお待ちください」と言われ、待たされること約30分…ようやく戻ってきた担当者の方が、衝撃の一言を口にしました。
パートナー(夫)の苗字には変更しないほうがよさそうです。
実はロシア語の苗字は、性別(男性形/女性形)によって語尾が変わる法則があります。わたしたち夫婦の場合、例えば夫が「チャイコフスキー」という苗字だったとすると、わたしの名前は自動的に「ひかり・チャイコフスカヤ」となるはずなのです。
しかし、日本の法律では国際結婚でもこの法則を適用することができず、どちらかの苗字に完全一致する必要があるとのこと。夫の苗字を選んだ場合、「ひかり・チャイコフスキー」となってしまいます。明らかに女性の見た目で性別も女性なのに、名前だけが男性形という不思議な現象により、状況によってはパスポートの不正利用や経歴詐称を疑われる可能性があるとのことでした。
このことが理由で、わたしたちは泣く泣く?!夫婦同姓を諦め、最終的には夫婦別姓を選択することになりました。
この頃には夫婦同姓の覚悟を決めていたので、拍子抜けしてしまいました…
実は入籍のタイミングでわたしが「ひかり・チャイコフスカヤ」に改名するという選択肢も考えたのですが、ここでもうひとつの壁が立ちはだかりました。
今後日本で子どもを産んだ場合、子どもは自動的に日本人パートナーの苗字を引き継ぐことになります。子どもが女の子なら問題ないのですが、男の子だった場合は再び苗字問題にさらされることになるのです。
わたしたちは子どもがほしい夫婦なので、「子どもが生まれたら、わたしと子どもの名前を夫の苗字に改名する」ということで、今のところは丸く収まっています。
印象的だったのは、役所の窓口の方がとても親切に対応してくれたことです。この一連の手続きで何度も電話をしたり窓口を訪ねたりしたのですが、そのたびに「いつでも相談してくださいね」と言ってくれました。法律や行政の手続きに関わることなので、ネットの情報は参考程度にして、必ず事前に役所へ相談するのがおすすめです。お互い手間が省けますし、なんといっても無料ですから!(笑)
夫婦別姓のメリット・デメリットと解決策
最終的に夫婦別姓を選んだことで、わたしたちが感じているメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
- 苗字変更の手続きが一切なくなった。
- 仕事やキャリアへの影響を考える必要がなくなった。
デメリット
- 現状は特になし
- 子どもが生まれたら手続きが煩雑になる
現時点ではメリットのほうが強く、デメリットは特に感じていません。先ほども触れたとおり、今後子どもが生まれた際にはいろいろな手続きが必要なので、そこがデメリットと言えるかも?しれません。
結論|文化と法律の狭間で選んだ道

国際結婚の苗字問題は、パートナーの家族に対する愛情や考え方を尊重してあげたい気持ちと、自分のキャリアや生活のしやすさの間でバランスを取る闘いでした。
私たちが夫婦同姓を断念した決め手は、パートナーの母国語であるロシア語の「性別による苗字の語尾変化(格変化)」という、日本の法律下では処理しきれない特殊な壁でした。女性名として不自然な男性形の姓を名乗るリスクを回避するため、私たちは最終的に「夫婦別姓」を選ぶに至りました。
国際結婚では、法律上のルールに加え、このように相手の国の言語や文化特有の制約に直面することがあります。もし同様のケースで悩んでいるなら、今回の私たちの体験談を参考に、まずは役所の窓口で具体的なシミュレーションをしてもらうことを強くおすすめします。
事前の入念なリサーチが、大きな助けとなるはずです!

